Wednesday, 22 May 2024

ハバナ症候群を説明するのに、脳障害と "集団ヒステリー "の二者択一は必要ない

 米国の外交官を苦しめている不可解なハバナ・シンドロームの傷害は、パルス・マイクロ波や集団心理学だけでなく、もっと複雑な説明ができるかもしれない。

キューバ・ハバナのアメリカ大使館 Adalberto Roque/AFP via Getty Images

彼らは脳損傷ではなかった。2016年末にハバナで初めて報告されて以来、警戒と困惑を呼んでいる外交・諜報機関の米政府関係者が経験したさまざまな原因不明の症状である「異常健康インシデント」(AHI)を報告した約80人について、米国立衛生研究所の臨床および脳画像研究が最近実施され、そう結論づけた。対象者は、平衡感覚の欠如、偏頭痛、「脳霧」、疲労など、多様で非特異的な症状を報告している。

あまり議論されていないが、3分の1近くが持続性姿勢知覚性めまい(PPPD)と呼ばれる疾患の診断基準を満たしていた。PPPDは、めまいやめまいのどのような原因によっても誘発される脳機能の異常に関連した障害で、機能性神経障害の他のサブタイプと同様、従来の検査ではわからない。この疾患は、"ハバナ症候群 "についての未検査の手がかりを与えてくれる。

現在、この症候群については2つの説があり、どちらも専門家によって力強く主張されている。ひとつは、報告されているAHIの事象は「集団心因性疾患」、時に集団ヒステリーと呼ばれるもので、現実の症状が閉鎖的な社会環境の中で心身症的に広がっていくものである、とするものである。もうひとつは、実際に攻撃が行われ、おそらくパルスマイクロ波が脳にダメージを与えたというものである。

オークランド大学の医療社会学者ロバート・バーソロミューとカリフォルニア大学ロサンゼルス校の神経学者ロバート・W・バローが、事件に関する公開情報に基づき提唱した、最初の集団心因性疾患の説明を考えてみよう。彼らは、ある大使館の職員がキューバの大きなコオロギの鳴き声におびえ、(元CIA諜報員のフルトン・アームストロングの言葉を引用して)「症状を報告するよう、強要はしないまでも、人々に働きかけ」、政府全体に健康上の苦情が蔓延するきっかけとなった、と述べている。

意図的な攻撃が脳損傷を引き起こすという2つ目の見解は、この問題が最初に報告されて以来、広く報告されていた。この症候群は、2018年にペンシルバニア大学で行われた最初の研究の著者たちによって「無垢な脳震盪」とまで表現された。それ以来、何百人もの人々がAHIの報告を名乗り出ている。明確な診断基準がないことと、記述された症状の共通性を考えると、"ハバナ症候群 "に再帰属された片頭痛、前庭障害、不安を含む他の病状を持つ人が多く含まれていた可能性が高い。

しかし、パルスマイクロ波被曝とPPPDの間には、脳の損傷を伴わない、もっともらしい関係がある: マイクロ波聴覚効果(フレイ効果とも呼ばれる)は、頭部に照射されたパルス高周波エネルギーが頭蓋骨と脳の微小な温度上昇を引き起こし、その結果、圧力波が頭部を伝搬し、音として知覚される異常な視聴覚感覚を引き起こすことで起こる。1970年代にこれを研究した我々の一人は、予見可能な被爆条件下では、この効果は弱すぎて脳に損傷を与えることはないと言っている。しかし、計算上は、マイクロ波、ミリ波、レーザーエネルギーの十分強いパルスを照射して、AHIから最初に報告されたのと同様の症状を引き起こすと予想されるレベルで、前庭系を障害することは可能なはずである。このような前庭や聴覚の体験は短時間であることが予想されるが、予期しないめまいや不快なめまいの体験としては、PPPDを誘発するのに十分なものである。このことは、脳損傷後に予想されるような症状の改善ではなく、PPPDでよくみられるような症状の悪化を多くの人が経験したことの説明にもなるであろう。

2020年の米国科学・工学・医学アカデミー(National Academies of the Sciences, Engineering and Medicine)の報告書には、様々な人々にとって強烈に不快な体験であったに違いないことが記されている。その多くは、「突然、金切り声、さえずり、カチカチというような、あるいは突き刺すような大きな音が聞こえ始め、頭部に強い圧力や振動を感じ、耳や頭部に痛みを感じる」という、通常とは異なる方向性の体験であった。

高出力のマイクロ波やミリ波の送信機は現在存在しており、原理的にはそのような効果をもたらすことができるはずだが、すぐに発見されてしまうだろう。ミリ波は、他の機器との電磁干渉を引き起こす能力が低く、機器のサイズも小さいため、これまで最も注目されてきたマイクロ波よりも検出されにくいだろう。マイクロ波やその他のエネルギーがAHIに関与していることを立証するには、送信の検出、装置や傍受された通信などの科学捜査的証拠が必要だが、現在のところ一般に入手できるものはない。しかし、これは明らかに政府にとってデリケートな話題であり、政府は一般に公表したAHIに関するいくつかの報告書からマイクロ波に関する部分を大幅に削除している。ニュース番組『60ミニッツ』の2部構成の記事では、AHIの一部はロシア軍情報機関の特殊部隊による攻撃の結果であると主張した。

AHIの原因が何であれ、指向性エネルギー兵器が非軍事環境で使用されることを懸念する理由がある。ロシア、中国、アメリカはいずれも、高出力(ギガワット)のマイクロ波やレーザー技術を使った指向性エネルギー兵器を開発する大規模なプログラムを持っていると考えられている。その明らかな軍事利用には、ドローンの撃墜が含まれる。

エネルギー兵器プログラムの中には、対人兵器を開発しているものもあるようだ。2014年、ロシアの著名なマイクロ波技術者は、ロシアの敵対国を攻撃し混乱させるために、パルスマイクロ波とフレイ効果を使うことを提案した。中国は「神経攻撃」用の兵器を開発していることが知られており、その中には高出力マイクロ波を使ったものもある。高ピークパワーマイクロ波パルスの健康への影響に関する研究はほとんどない。このような研究は明らかに必要であり、政府以外の専門家もアクセスできる形で発表されるべきである。

私たちは、報道の多くを特徴づけてきた「脳障害」対「集団ヒステリー」という単純化された議論から離れる必要がある。パルスエネルギー攻撃を含む病態生理学的事象は、脳に損傷がなくても、PPPDのような脳機能の障害を伴う本物の病気を引き起こす可能性がある。

本記事は意見・分析記事であり、筆者または著者によって表明された見解は、必ずしもScientific Americanのものではありません。



2024年5月22日、Scientific American




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Friday, 10 May 2024

米情報機関が謎の「ハバナ・シンドローム」事例を軽視していることを目撃者が議員に証言

報告書は、外国の敵対勢力が原因である可能性は「非常に低い」と結論づけた。

バージニア州マクレーンにあるCIAのロビーの床に貼られたCIAのシール。
Bill O'Leary/The Washington Post via Getty Images

 米議会の公聴会で証言した証人たちは、米情報機関が、しばしば "ハバナ・シンドローム "と呼ばれる、米軍関係者が罹患した数十件の異常健康事故(AHI)を意図的に軽視していると非難した。

「ハバナ症候群」の20数人の被害者の代理人であるマーク・ザイド弁護士は、彼が仕事で見たが、機密扱いのない場では明かすことができなかったという米国の情報機関を引き合いに出しながら、「行政府は、特にCIAの高官の指示と操作によって、自分たちが知っていることを正直に報告していない、というのが私の見解です」と述べた。

米国情報機関が昨年発表した評価では、米国の外交官、情報機関関係者、国防総省職員が罹患したいわゆる「ハバナ症候群」の背後に外国の敵対勢力がいる可能性は「非常に低い」とされている。

水曜日の国土安全保障小委員会の公聴会に出席した証人は、いずれも情報機関の主張に異議を唱え、彼らの主張を証明する非公開の機密情報を引用した。

「ハバナ・シンドローム」についての国防総省の調査を指揮したグレッグ・エドグリーン退役米陸軍中佐は、攻撃は一種の未来型兵器を通して発射される「指向性エネルギー」と結びついている可能性が高いと議員たちに語った。彼は、これらの事件の少なくともいくつかは、ロシア情報機関による攻撃の結果であるという「極めて強い」兆候があると述べた。

「(安全な施設に)20分入れてくれれば、皆さんを納得させます」とエドグリーンは言った。

コメントを求められたCIAのスポークスマンは、昨年の評価を発表した国家情報長官室に質問を照会した。

ODNIのスポークスマンは、ABCニュースに対し、「我々は、我々の理解を深めるために、特に我々が追加的な調査と分析を必要としていると指摘した分野において、新たな情報を特定することに引き続き注力している」と述べた。

昨年3月、アブリル・ヘインズ国家情報長官は声明の中で、健康被害はおそらく "持病、従来の病気、環境要因 "などの他の要因の結果であろうと述べた。

ヘインズ長官は、武器などの "原因メカニズム "や "特異な症候群 "が報告された症状を引き起こしたという証拠もないと付け加えた。

ザイドは委員会に対し、アメリカ国内を含め、世界中の米軍関係者に対する攻撃を知っていると語った。多くの攻撃は、多くのCIA職員が住むバージニア州北部に集中しているという。

ザイドは、CIAが2022年に行った約1000件の "ハバナ・シンドローム "を調査した評価について、「少なくとも12件の事件があり、他の代替要因では説明できないとCIAでさえ認めている」と付け加えた。

委員会の議員たちは、これらの主張を引き続き調査し、機密の場で証人からさらに話を聞くことを約束した。

ロイド・オースティン国防長官は水曜日、国会議事堂の別の場所で証言し、AHIに関連した症状を報告した国防省職員への補償について質問された。

ニューハンプシャー州選出の民主党上院議員、ジャンヌ・シャヒーン氏は、「国防総省がこの問題に取り組み、被害者に必要な補償を行うことを、この委員会に約束していただけますか」と質問した。

「もちろんです、上院議員」とオースティンは答えた。

議会で可決された2021年のHAVANA(Helping American Victims Afflicted by Neurological Attacks)法は、任務中に敵対行為によって脳に損傷を受けた隊員への支払いを政府機関に許可している。

米政府関係者は21日、ABCニュースに対し、国防総省は2016年以降、AHIに関連する「200人以上の医療評価および/または治療を軍の医療システムで行ってきた」と述べた。しかし、そのうちの何人が外傷性脳損傷を負ったと判断されたかは、患者のプライバシーに関する規則を理由に明かさない。

しかし、これまでのところ、支払いを受けた者はいない。

「国防総省は、ハバナ法の実施ガイダンスの確立に取り組んでいるため、まだハバナ法の支払いを行っていません」と当局者は述べた。「今年の夏には、そのようなガイダンスを発表する予定です。」

米国国立衛生研究所(NIH)が先月発表した研究は、「AHIを経験した参加者のグループでは、対照群と比較して、脳損傷のMRIで検出可能な有意な証拠はなかった」と結論付けています。

しかし、国防総省は関係なく、影響を受ける可能性のある人々に補償を提供するかもしれない。

「実施ガイダンスでは、補償を受ける資格のある人を決定するための基準を取り上げる予定である。MRIの結果は、その判断の際に考慮されるいくつかの要因のひとつになると予想されます」とその関係者は述べた。



2024年5月9日、ABC News




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Wednesday, 8 May 2024

ロシア関与の報告後、議会はハバナ・シンドロームを再度調査へ

外国の敵は関与していないとの政府評価が誤りである可能性を懸念し、下院が証言を聴取

ハバナのアメリカ大使館。この現象は2016年、キューバの首都にいる外交官たちが、脳の損傷、難聴、めまい、奇妙な聴覚感覚を訴えたことで初めて報告された。Photograph: Ismael Francisco/AP

 議会は水曜日、複数の国で米国の外交官が受けた一連の脳損傷と難聴事件、ハバナ症候群として知られるようになった謎の現象を解明するための新たな試みを行う予定である。

先月発表されたメディアの連合による包括的な調査によれば、音波兵器でアメリカ大使館員を標的にしたのは、ロシアのエリート諜報・暗殺ユニットであろうという。

水曜日の午後、下院情報小委員会がこの事件を調査する予定であり、その委員長であるテキサス州選出の共和党下院議員オーガスト・プルーガーは、当局が勘違いをしているのではないかと懸念を表明した。

「特にアメリカ国内で、異常な健康事件が発生し、アメリカ人が標的にされる可能性があることは、敵対する政権が、われわれの外交、軍事、諜報活動を弱体化させ、混乱させるために、どこまでやりかねないかを思い知らされることになる」と、プルーガー下院議員は、午後2時(東部標準時間)に予定されている下院国土安全保障小委員会(テロ対策、法執行、情報)の会議を予告する声明の中で述べた。

「もし外国の行為者によって意図的に引き起こされたのであれば、これらの攻撃はわが国の国家主権の明白かつあからさまな侵害である。この小委員会は、これらの事件とその背後にある潜在的技術と犯人を調査する責任がある。」

会議では、軍関係者、エネルギー兵器の専門家、そして1年にわたる調査の後、『インサイダー』紙、『60ミニッツ』紙、『デア・シュピーゲル』誌によって発表された報告書の主執筆者であるクリスト・グロゼフ氏の証言を聞くことになっている。

また、キューバ、中国、ヨーロッパ諸国にあるアメリカ大使館やその他の政府拠点でハバナ症候群の犠牲となったという20人以上の人々の代理人であるマーク・ザイド弁護士も登場する。

ザイドは報告書の中で、「間違いなく外国の敵対勢力によって行われたこれらの攻撃の本当の詳細を隠蔽するために、我々の政府がどれほどの努力を払ってきたかを目の当たりにし、非常に心を痛めている」と述べた。

ニューヨークとワシントンDCにあるロシアをテーマにしたレストランでシェフとして働いていたロシア人スパイが2020年に逮捕され、その後強制送還された。

この現象は2016年にキューバの首都にいる外交官から報告されたもので、脳損傷、難聴、めまい、奇妙な聴覚感覚を訴えていた。

そのうちの5つの機関は、外国人の関与は「非常に考えにくい」と結論づけた。しかし、米国防総省が先月、リトアニアのヴィリニュスで開催された2023年のNATOサミットに出席した高官が同様の症状に見舞われたことを明らかにするなど、報告は後を絶たない。

2021年、米議会はハバナ法を可決し、国務省、CIA、その他の政府機関に、赴任中に影響を受けた職員とその家族への支払いを許可した。



2024年5月8日、The Guardian




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